みなさん、こんにちは。Open棟梁プロジェクト、PO の西野 大介です。
前回は、Open棟梁2.0の
"サービス開発基盤"を使って、具体的にどのようなサービスを開発できるか?についてご紹介いたしました。しかし、もちろん Open 棟梁 2.0 はサービス開発でしか使えないというものではありません。Open 棟梁 1.x で培われた QCDF 向上の仕組みを利用して、企業向けシステム開発基盤として利用できます。今回は、これからのSI ビジネスの変化を見据え、開発基盤としての Open 棟梁2.0 がどのように皆さまのビジネスのお役に立てるかをご説明していきたいと思います。
これからのシステムに求められるものとは?
昨今、企業の情報システム(SoR
※1 )にもSoE
※2 の波が押し寄せており、
第1回で説明した
「従来型のSIの終焉」がくるものと予想しています。
※ 1 SoR (Systems of Record):
従来の基幹系システム
※ 2 SoE (Systems of Engagement):
バリューチェーンを強化する繋がりのためのシステム
SoRは、従来の基幹システムで、企業活動を効率化するためのものと言われています。また、SoEは、バリューチェーンを強化する繋がりのためのシステムで、具体的には、モバイル、ソーシャルメディアの利用などが挙げられます。これらを利用してサービスの利便性を向上させ、更にユーザの要望や期待を把握し、それを迅速にシステムに反映させます。そのため、これらの技術要素や、ユーザの要望や期待を迅速にシステムに反映させる柔軟性などが求められます。
第1回でご説明しましたように、今後は事業システムの高度化 (差別化・独自性追求をする企業競争力の強化に繋がる領域へのシフト) が起きると予想しています。この事業システムを高度化させる上で、SoE による「顧客をはじめとした人とのつながり」が重要になると考えています。とはいえ、SoR (基幹系システム) に求められていた安定性や信頼性も、もちろん重要です。したがって、これからの SI は、SoR だけ、SoE だけに注力するのではなく、これらを融合させることで、「既存システムの利用範囲を拡大させたり、外部サービスとのシームレスな連携を実現したり、そういった需要に対応するような形態になっていくだろう。」と予測しています。そして、最終的には「基幹事業をデジタル化し、既存の事業スキームを維持するのではなく、迅速にトランスフォームさせていくことを可能にする技術力や提案力が求められるようになる。」と考えます。このため、今後は、このSoRとSoEの融合させる技術力や提案力が必要になってくると考えます。
また、SoEは、SoRと比べ、更に多様な技術が使用されています。例えば、サービス化・外部サービス連携に必要なWebAPI(REST / JSON-RPC)、IDフェデレーション(SAML / OAuth 2.0 / OpenID Connect)、クラウド(AWS / Azure / GCP)、フィジカルコンピューティング、ビッグデータ、人工知能など、汎用技術から要素技術まで、幅広い技術が求められると思います。このため、今後の企業の情報システムにおいても、さまざまなフロントエンド、プラットフォームといったレベルだけでなく、さまざまな開発言語、フレームワーク、ミドルウェア、外部サービス等々が活用されていくことになると考えており、Windowsや.NETの範囲に留まらず、オープンなプロトコルを使用して、これらを連携させていくことが重要だと考えています。
開発技術の急速な多様化と、その問題
このように、技術の多様化に追随する必要のある SoE が隆盛する中で、フロントエンド開発技術の分野では、JavaScript MV* Framework、スマホネイティブ、Apache Cordova などのハイブリッドアプリなどが登場しました。これらの開発技術は、その特徴に、その特徴に、"高い柔軟性"や"短いライフサイクル"を持ち、ますます、標準化(安定した利用)が難しくなってきています。
このように、SoR は安定性や信頼性が求められるのに対し、SoE は柔軟性が求められます。このため、SoR には SoR の、SoE には SoE の対応が必要になります。
Open棟梁1.x系 QCDF向上の仕組み
幸いにして、Open棟梁1.x系には、ミッションクリティカルなエンタープライズシステムの構築・運用を支えてきたQCDF向上のノウハウがあります。このノウハウをもとに、SoR に求められる安定性、柔軟性を確保できます。
Open棟梁2.x系 さまざまなフロントエンド、プラットフォームのサポート
また、この QCDF 向上のノウハウを軸にして、Open棟梁2.x系では、新しいサービス開発のノウハウを加えていきます。具体的には、前回ご紹介しましたように、.NET Standard へのライブラリ移植を行い、.NET Core(→Linux系)、Mono(→スマホ)、Windows10 IoT、など、サポートをクロスプラットフォームの範囲に拡大していきます。これにより、SoR に求められる柔軟性を確保してゆきます。
SoRとSoEの融合を図る、企業向けQCDF向上システム開発基盤
従って、Open棟梁2.x系では、SoE向けの新しいフロントエンド開発技術の選択とそのテンプレート化、SoR向けの安定した標準化されたテンプレートの適用が可能です。そして、今後もさまざまなニーズを取り入れ、SoRとSoEの融合を図る、新しい企業向けQCDF向上システム開発基盤に昇華していく予定です。
また、Open棟梁はオープンソースソフトウェアなので、ソリューションプロバイダーにロックインされること無く、「エンドユーザ様単独でのご利用」や「協創の場でのご利用」などといったことも可能です。また、独自の拡張を追加することも可能です。たくさんの皆さまからの Pull Request をお待ちしています。
最後に
過去3回に渡り、Open棟梁 2.0 の概要をご紹介いたしましたが、いかがでしょうか。企業向けの開発基盤としても、サービス開発基盤としても、Open 棟梁が活用できることを実感していただければ幸いです。
なお、本投稿に関して何かございましたら、次のE-Mailアドレスまでご連絡ください。また、本、オープンソースエコシステムへ参加して頂ける部会メンバも募集しております。
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